奇跡 〜 キミとの軌跡 〜
第一話 キミと出逢う
〜 なのは 〜
pipipipipipipipi ……
「ん、ん〜〜」
目覚ましの音に、もそもそと布団の中から手を伸ばして予測をつけたあたりを数回叩くと、停止ボタンにヒットする。
「ふあぁ〜〜」
大きな欠伸とともに両手をあげて背伸びをしつつ、上半身を起こして。
いつもと同じ部屋、いつもと同じ時間、いつもと同じ朝。
いつもと違うのは、私、高町なのはが今日から高校三年生に進級すること。
そして。
「おはよう」
私のベッドに腰掛けている見知らぬ女の人に微笑みながら朝の挨拶をされたこと。
………………。
そこで、問題です。
もし、朝目覚めて、部屋にいきなり知らない女性(しかも外人)がいたら、あなたはどうしますか?
一、もう一度、布団に潜る。
二、もう一度、布団に(以下略)
三、もう一度、布(ry
なんだ、夢か。今度はちゃんと起きなきゃ。
私はやり直しとばかりに、ゴソゴソと布団に潜り込……。
「ねぇ、もう起きないとダメなんじゃないかな?」
「…………」
どうやら、夢ではないようで。
現実と向き合うために恐る恐る体を起こし、うろんげな視線を送る私に、その人はニッコリと極上の笑顔を返してくる。
……言葉も通じるし、危害を加えるとかは、なさそうだけど。
とりあえずの身の安全は確保出来ている感じなので、根本的な問題を解決することにしよう。
「あのぉ、どなた、ですか?」
「私は、フェイト・テスタロッサ。フェイトって呼んでくれて構わないから」
いたって普通の自己紹介だが、逆にこの場面ではそぐわない。
「はぁ。それで、フェイトさんは一体」
「フェイトちゃん」
「は?」
「フェイトちゃん、だよ」
自分のことを指差して二度も繰り返す彼女に。
「ええと。フェイトちゃんは」
私が言いなおすと、まるで子供のように満足気な表情。
いけない。その可愛さに不覚にも少しときめいたりしてる場合じゃないってば。
「一体、どうして、どうやって、ココにいるの?」
私の質問に、困ったように微笑むと、小さく首を横に振る。
「ごめんね。私も正確には答えられないの」
「どういうこと?」
「気づいたらここにいたから。でも、それに関係することで、答えられる事ひとつあってね」
なんだろう、と私は首を傾げながら続きを待つ。
すると。
「私、ユーレイみたいなんだ」
……は?
ユーレイ……って、幽霊??
「プッ……クスクス……そんなすぐバレるようなウソ、子供だってつかないよ?」
突拍子もない展開に、なんだか笑ってしまう。
「んーと、それじゃあ。……ハイ」
そう言って、右手を差し出すフェイト……ちゃん。
この差し出し方は、握手、だよね。
なんで今、握手なのか疑問に思いながらも、反射的に私も右手を差し出してフェイトちゃんの右手を握……。
スカッ。
え?あれ?目測、誤ったかな?
もう一度。
スカ。
えええ??
むきになって、何度か繰り返してみたものの、結果は変わらず、私の右手はフェイトちゃんの右手をすり抜けた。
すり抜ける……?
「にゃ……にゃあああああああああっっ!!」
不測の事態に思わず悲鳴をあげながら仰け反る私に、フェイトちゃんは、驚かせてごめんね、とすまなそう顔をして。
「ね?ウソじゃないでしょう?」
「う、うん……」
この現実を受け入れるために、大きく深呼吸。
落ち着け、落ち着こう、なのは。
と、そこへ。
部屋のドアがノックされ、お母さんが不思議そうな顔で現れた。
「なのは、おはよう。ちゃんと起きてるの?」
「あ、お母さん!お、おはよう」
フェイトちゃんのこと、何て説明しよう……。