『 こんななのはさんはイヤだ 』  (『ポテト』より)



「な、なのは。SとM、どっちにする?」
「はぁ?」
「だから、ポテト。SとM、どっち?」
「LL」


なのはの即答に、隣のフェイト、そしてカウンターの向こう側にいた店員、ともに動きを止める。


「……え、えーと、なのは」
「え・る・え・る」
「あの、ね。このお店、ポテトはLサイズまでしかないみたいなんだけど」
「しょぼっ!!」


カウンターの上に置いてある、下敷きタイプのメニューを指差すフェイトの手元を覗き込んでの一言。
思わず、フェイトは店員にえへらえへらと愛想笑いを浮かべてみせた。


「じゃあ、Lでいい。……しょぼっ!!」
「うん。あ、あの、なのは、店員さんの前だから」
「大事なことは2回言うんだよ」
「……へぇ……」


注文と会計を終えて待つこと少々、商品をカウンターに置いた店員は、当然の如く、スマイルは売ってくれなかった。

フェイトがトレイを受け取ると、すでになのはの姿は隣に無くて。


「あ……」


店内を見渡し、当然のように着席して待っている彼女を見つけた。


「遅い」


トレイをテーブルに置くや否や、フェイトが着席するのを待たず、飲食を始めてしまうなのは。
フェイトは何も言わず、自分の分の飲み物とポテトを手元に引き寄せた。

な、なんだろう。このやるせなさは……。

不思議だ。
せっかくのデートだと言うのに、あまり気分がウキウキしない。

表情が曇るフェイトにおかまいなしに、なのはの指令が次々と降りかかる。


「フェイトちゃん、ティッシュ」
「はい」
「フェイトちゃんのレモンティー、ちょうだい」
「どうぞ」
「フェイトちゃん、代わりにトイレ行ってきて」
「それは無理」


フェイトが断ると、あーもう、面倒だなぁ!と八つ当たりぎみに言い捨てて、なのははトイレに向かった。


「…………」


一人残ったフェイトは心の中でさめざめと涙を流しながら。


「なのはってやっぱり、態度がドLだよね……」


Sサイズのポテトをちびちび齧る。

    せめて割り勘に、って言ったら、怒るかな。

会計の時、まとめてフェイトが支払っていて、まだ清算をしていない。
ポテトがSサイズのフェイト、なのははLサイズ。
割り勘でもなのはの方がお得な事には違いないのだが、何だか言い出しづらいフェイトだった。




数日後、その飲食代を『何故ちゃんと請求しないのか』となのはにキレられて、素直に謝罪しているフェイトを見て。

親友のはやては。


「あれも、一つの愛の形か……」


と、呟いたという。


  完


なんかなのはさんとフェイトちゃんの中の人っぽい、ってコメントをもらいました。……なのはさんの中の人、こんな?!(笑)



  




inserted by FC2 system inserted by FC2 system